葬儀の簡単手引き

   

ドライブスルー形式の葬儀の登場

亡くなった人の冥福を祈って行う葬儀の形態は時代にあわせて変化してきた面があります。通夜と告別式のそれぞれについて、菩提寺から僧侶を招いて読経をしてもらうとともに、親族や地域・職場・学校関連の人々がこぞって集まり、その合間に霊前で焼香をするというのが今日の標準的なスタイルですが、このスタイルにあてはまらないものも続々と登場しています。
ひとつには式場内で音楽を奏でたり、亡くなった人の生前の思い出をスライドやビデオなどで紹介をするといった、できるだけ儀式としての堅苦しさを除いて、亡くなった人の個性があらわれるような演出をしたものが挙げられます。ほかには家族や親族程度の内輪の人々だけで行う家族葬、祭壇は自宅での枕飾り程度にとどめて火葬だけが主体となった火葬式、人間も自然の一部という考え方に立って樹林や海洋への散骨などで済ませる自然葬などのように、内容をより簡素化したものがあります。このような新しい潮流のなかで、2017年12月に登場したのがドライブスルー形式の葬儀です。
はじまりは長野県上田市にあるセレモニーホールで、もちろん式場のなかには通常の焼香ができるようなスペースも設けられていますが、これに併設するかたちでドライブスルー形式の大きな窓口が外に向かって開かれているのが特徴です。従来のスタイルからすればかなり異質な形態といえますが、当然ながらこのようなアイディアが実現に至ったのには理由があります。
現在の我が国は高齢社会が進行しており、なかなか足腰が立たず葬儀に参列したくてもそれが物理的にできないという高齢者も多くなってきています。身体に障害をもっている人なども同様で、多くの参列者で手狭になっていて身動きがとれない従来のような式場では、参列したい気持ちがあっても遠慮せざるを得ないシーンも多かったはずです。このような状況を踏まえて、できるだけ参列者の負担をなくしつつ、亡くなった人への哀悼の気持ちを表現するための方法はないかという問題意識のもとで考えられたのがドライブスルー形式です。
一連の動作はすべてマイカーのなかですので、最初の受付での記帳についても、係のスタッフから渡されたタブレット端末に住所や氏名を入力することによって行い、あわせて香典袋もここでスタッフに託すことになっています。焼香も自動車に乗車のままで行うことを前提とした電熱式の特別なテーブルが用意されていますのでスムーズです。もちろん式場内のようすはドライブスルーの窓口からも見えるようにレイアウトそのものが工夫されていて、亡くなった人の大きな遺影が進行方向の正面に据えられていますし、逆に式場内にいる遺族のほうからも、ドライブスルーのレーンに参列者の車両が到着したことをセンサーで感知し、モニターごしに外の焼香のようすを確認することが可能です。
全体として焼香を終えるまでに要する所要時間は3分程度にとどまりますので、高齢者や障害者であっても身体的な負担は極力避けることができますし、そのほかにもビジネスなどで忙しい人が葬儀に参列するのにも使うことができるところがポイントです。しくみとしてはハンバーガーショップなどでよく見かけるドライブスルーの装置と同様ですので、敷地内のレーンに入場してきた自動車をカメラで自動認識し、安全に誘導する機能などの一式が備えられています。
このような葬儀のあり方は伝統的な方式を重んじる立場からは不謹慎という見方もあるのは事実といえますが、いっぽうで身体的な事情なども最大限に考慮して、亡くなった人との最後の別れをたいせつにしたいという気持ちを汲み取ってシステムのなかに採り入れたという英断があったこともまた事実です。社会的な評価が定まるのはこれからということになりますが、いずれにしても時代とともに移り変わるのは葬儀の世界も同じといえます。

ドライブスルー形式 , 告別式 , 家族葬 , 演出 , 火葬式 , 自然葬 , 葬式 , 通夜 , 高齢社会